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誰も知らないやり方で

音楽とか映画とか本とか社会とかを考察してみるブログ。コメントはブクマでお願いしまスゥゥゥ

【小説】手紙【東野圭吾初めて読んでみた】

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東野圭吾氏の小説を読んだのは始めてなので、これほど酷い作品を書く作家だとは知らなかった
どうしてここまで何の予想も裏切らないベタな小説が書けるのだろうか。


くりぃむしちゅーの番組でやっていたベタドラマかと思った。
会話や手紙の中身が説明台詞で埋め尽くされているのも凄い。
そりゃあ東野の作品はやたらとドラマ化されるはずである。
そもそもが出来の悪い二時間ドラマみたいな内容の小説なんだもの。

「強盗殺人犯の弟の半生」というプロットはまぁ悪くない。
冒頭の殺人シーンも(甘栗盗んでテレビ見てたら見つかったというトンデモ展開は酷いが)それなりに緊張感はある。
で、比較的マシな部分というのがその二点ぐらいなのである。

そもそも、この小説の時代設定っていつ頃なの?
プリクラとかが登場するから、おそらく西暦2000年前後のはずなのだが、登場人物の言動が異様に古臭いのである。


ナンパする時に「お茶しない?」と言ったり、さえない男に対して女が「イモくさい」と言ったりして、死語連発しているし、就職に関しても、いくら不景気とはいえ高卒とはいえ新卒が正社員になれないというのはありえない。
普通だったら、まあそこそこの工場ぐらいには雇ってもらえるはずだからね。
「くず鉄会社のアルバイトしかできない」というのは無理がある。
身内に犯罪者がいようが、いちいちそんなこと詮索してくるのは一部の有力会社ぐらいのもの。
肉体労働なら本人が身分を隠そうと思えば、いくらでも隠せるはずだ。

第一、借金もないのにそこまで貧乏するわけないんだよなぁ。
兄弟二人揃ってどこかでバイトすりゃ一年で100万ぐらい貯まるだろ?
それから大学目指したらいいじゃないか。
引越しバイト掛け持ちするなんて非現実的すぎ。

キャラクター、時代背景、話の作りなど、全体が妙に梶原一騎くさいのも気になる。
「あえて今、梶原一騎をフィーチャーしている」というのならわからんでもないが、今時本気で梶原一騎みたいな話をやってどうすんのよ?
「『タイガーマスク』や『巨人の星』を吹き出さずに読め!」と言われているようなもんだ。
これを真面目に読んでる人は「古っ!」と思わなかったのだろうか?

各キャラクターが全くテンプレ通りというのもすごい。
金持ちは昔の青春ドラマに出てくるような陰険だし、業界人は若手バンドを意のままに操ろうとする守銭奴だし、ブスはブスだけど心が綺麗だし、社長は表向き厳格な社長だけど裏では主人公と繋がっているし、ま~どこかで見たような奥行きの無い人物ばかりなのである。
主人公の「自分では気がついていないけど、実はイケメンで歌の大天才でした」っていうラノベ設定がまたなんとも。

最もひどいと思った展開は、直貴が所属するバンド(スペシウムとかいう史上最高にダサい名前のバンド)がプロデビューしようとすると、メジャーレーベルのプロデューサーから邪魔されるという件。
こういう「メジャーで商業的な音楽は糞。路上とか刑務所の中でかき鳴らされている音楽こそ本物」みたいな最低の思い込みで書かれた話には心底うんざりする。
主人公が心酔するジョンレノンなんて、世界一売れたミュージシャンだぜ?
そして、東野圭吾氏だってメジャーな新聞や雑誌に連載を持っている流行作家じゃないか。
それなのになぜメジャーなレコード会社を悪として描くんだ?

 

もちろん、売れるためだけに作られたセルアウト音楽は掃いて捨てるほどあるが、メジャーというフィールドの中でも自分の信念を曲げず、商業性と芸術性を両立させたミュージシャンはいっぱいいるわけで(マイルスとかブライアン・ウィルソンとかレノン・マッカートニーとかJBとか山下達郎とか)。
そういった方々の音楽で一度でも感動したことがあるなら、「メジャーな音楽は商業主義だから糞」みたいな手垢のついた陳腐な表現は使わないと思うのだが。
映画化の際にバンドから漫才に設定を変えたのは慧眼であろう。

あとこれは好みの問題だが、「ジョン・レノンと言えばイマジンの人」というような先入観の持ち主を私は信用していない。
ジョンレノンと言えば『Money』の人であり、『Tomorrow Never Knows』の人であり、『I Am the Walrus』の人なのである。
『イマジン』も名曲ではあるが、ジョンの持つバリエーションのひとつに過ぎない。

【評価】30点
【作者】東野圭吾