誰も知らないやり方で

音楽とか映画とか本とか日常をネタバレありで考察するブログ

「日本人のラップは黒人の真似事にすぎない」という批判について

f:id:trodan:20170521023944j:plain

フリースタイルダンジョンや高校生ラップ選手権などのMCバトルブームで注目されたためか、よくも知らないくせに日本語ラップに文句をつける人が増えたので書きます。

 

かつて為末大日本語ラップを扱き下ろし、ライムスの宇多丸らが反論したプチ炎上事件がありました。

為末さんの発言を要約すると、ようするに「外国の真似事をしているからダメ。和ジャズのように日本オリジナルを目指せ」ということらしいです。

為末さんご本人が主張を転向しているかもしれないし、今更蒸し返すのもアレですが、同じような考えを持っている人は未だ多いと思うので、この件について。

 

こういう発言って日本語ラップはもちろんのこと、USラップにもジャズにも詳しくない人が言いがちなんですよね。

「いやいや、お前そもそもブラックミュージック自体そんなに聴いたことないやろ!」と私は言いたいです、ええ。

「日本人の技術者が数々の名機材を開発したことにより、USのHIP HOPが進化できた」という側面もあるわけで、日本とHIP HOPの関係は深いのである。

 

ジャズやヒップホップを多少なりとも聴いてきた私からすると、少なくともオリジナリティという面からすれば、和ジャズより日本語ラップの方がオリジナルです(べつに和ジャズを貶しているわけではない)。

日本語というリズムに乗りにくい言語でラップをしていること自体がとてつもなくアクロバティックなわけで、インストであるジャズよりも必然的にオリジナルにならざるを得ない。

 

第一、日本の軽音楽の流れは海外音楽を日本向けに置き換える歴史なわけで、オリジナリティがないなんて言い出したら、J-POP全般にオリジナリティなんて無いですよ。

日本の心ということになっている演歌や「上を向いて歩こう」などの流行歌にしたって、ルーツはアメリカンポップスだし。

 

ビートルズストーンズムッシュかまやつらがグループサウンズに置き換え、バッファロー・スプリングフィールドやモビー・グレープをはっぴいえんどが日本語ロックに置き換え、ボブ・ディラン吉田拓郎井上陽水がフォークロックに置き換えてきたからこそ今日のJ-POPがあるわけで。

もちろんただの置き換えだけではなく、その後ガラパゴス的な進化を続けている。

 

RUN-DMC、N.W.A.、Wu-Tang ClanA Tribe Called QuestDe La Soulなどを日本向けに置き換えて発展した日本語ラップは、日本軽音楽史から見れば極自然なムーブメントである。

ZEEBRA宇多丸が証言しているように、実は日本はかなり早くからヒップホップに反応できている。

英語圏の中では断トツに早い。

 

そもそも日本人は有色人種なわけで、白人よりも黒人に近い人種なのである。

ブラックミュージックを母体とするHIP HOPが馴染みやすいのは当然。

まぁ実情としてはあまり浸透していないけど・・・

 

私がなぜ日本語ラップを偏愛しているかと言うと、従来の邦楽に不足していた「リズム」の要素が強いからである。

言うまでもないが、音楽はメロディとリズムの二大要素で成り立っている。

邦楽には筒美京平桑田佳祐松任谷由実といったメロディの天才が大勢いるが、リズムという面で見ると、頼もしい人はそれほど多くない。

 

70~90年代のヒット曲を聴いて良曲だと感心はすれど、リズムに物足りなさを感じる。

「メロディや歌唱法がソウルなのにリズムが平凡なバンド演奏」とか、けっこうあるもんなぁ。

なぜJBやスライの曲みたいなリズムで演奏しないのか。

当時のメジャーなミュージシャンで言えば、山下達郎佐野元春ゴダイゴ大瀧詠一細野晴臣小沢健二岡村靖幸小西康陽スガシカオなどはリズムも凝ってたけど。

 

2000年前後にドラゴンアッシュ、キック、リップスライムZEEBRAがメジャーになり、ラップブームが到来したことにより、J-POPにおけるリズムの幅は格段に広がった。

一般リスナーの耳が変わった瞬間である。

これが日本語ラップ最大の功績であろう(同時に宇多田ヒカルMISIAら和製R&B勢の功績でもある)。

 

もう一つの功績は、和製英語を増やしたことにある。

リスペクト(ディスリスペクト)、バイブス、レぺゼン、a.k.a.、ゲトー、プロップス、マイメン、ワックなど、今では普通に使われる言葉である(そうでもないか)。

ダースレイダーが言うように、ラップがもっと浸透すれば英語に対する抵抗がなくなり、「日本人は英語ができない」という何百年も続く呪いを解くきっかけになるかもしれない。

 

RHYMESTER - 『ガラパゴス』。私の言いたいことはこの曲にすべて詰まってill