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【映画】レイ【似すぎ】

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天才レイ・チャールズの自伝映画。

今作におけるジェイミー・フォックスのなりきり演技があまりにも衝撃だったため、その後「そっくりさんによる有名ミュージシャンの自伝映画」が多く作られるようになった。

エポックメイキングというやつである。

 

クインシー・ジョーンズアート・テイタム、トム・ダウドなど、ブラックミュージックリスナーにはお馴染みの有名人が次々登場する前半が楽しい。

とくにクインシーの良い奴っぷりが最高。

アトランティックと契約し、レイの新しい才能が開花していくシーンがハイライトであろう。

 

あの天才レイですら、最初はナット・キング・コールやチャールズ・ブラウンの物真似歌手の一人にすぎなかったという事実は興味深い。

やはり「芸事は真似から入る」ものなのだ。

 

そして何より『Mess Around』、『What'd I Say』、『I Got a Woman』、『Georgia on my mind』といったレイの代表曲が誕生する瞬間を再現していることが素晴らしい。

ミュージシャンの自伝映画で最も重要なのはレコーディングシーンなのである。

オリバー・ストーンの『ドアーズ』はその点を全くわかっていなかったので、ゴミそのものだった。

 

劇中の「俺は盲目ではあるが馬鹿じゃない」という台詞は印象的だが、悪知恵の方に頭を使ったため、レイは次第に薬と女に溺れて急落していく。

闇堕ちしつつも、狙い通りヒット曲を出して挽回する部分は痛快だけど、ジャンキーが長期的に活躍できるはずもなく、ついに仕事と家族を失う寸前まで追いつめられてしまう。

天才の業の深さを感じさせられる件だ。

 

彼が逮捕された60年代中盤は、もうビートルズビーチ・ボーイズが台頭しているロックの時代なわけで、正直言ってレイのオーラは減じてしまっている。

映画としてみても、薬中の件は少々クドいし、「母親や弟が妄想の中で蘇生してレイを励ます」という件はフィクション性が強すぎていただけない。

そもそも回想シーンが無駄に多いのである。

 

全体的に説明台詞が多めというのも気になるが、「時間を食いそうな部分はさっさと台詞で終わらせて、たくさんレイの曲をかけよう」という演出でもあるわけで、痛し痒しといった所か。

レイ・チャールズと黒人差別の戦いについて、もっと掘り下げてほしかったのも事実。

 

というわけで不満点もある映画だが、レイ・チャールズ及びブラックミュージックの入門作として間違いのない傑作。

 

Ray Charles - 『Hit The Road Jack』

私が一番好きなレイの曲。

 

2004年 アメリカ 152分

【評価】90点

【原題】Ray

【監督】テイラー・ハックフォード