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【漫画】混沌大陸パンゲア【ゆめにっき】

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ああ、もう山野一は読まないと心に決めていたのにまた読んでしまった。

なんだかんだハマってきてるな。

マイルス者の私にとってパンゲアと言えばもちろん「アガパン」のパンゲアなのだが、この作品とは無関係だろうな。

ちなみにマイルスの『パンゲア』は引退(5年後復帰したが)前の最高到達点なので、絶対に聴くように!

 

  • 【カリ・ユガ 第1話 ドブ板のある町】

なぜか大衆スーパー(この話の場合はマルエツ)に貴金属店があったりするのだが、ああいう場所で宝石を買う人間など実在するのだろうか。

おそらくそういった興味から描かれた作品であろう。

 

  • 【カリ・ユガ 第2話 全自動ガードマンK】

「知性を剥奪されてしまう」というのは山野一が好んで描くシチュエーションである。

ニーチェワーグナーにかぶれていたインテリ崩れのサラリーマンが「旗振り警備員」をさせられているのはそこそこにリアル。

「あなた私の同類ね」と言われてホモにさらわれるのだが、ホモのビジュアルがもひとつ弱い。

 

  • 【カリ・ユガ 第3話 ぼーふらはぼーふら】

この話ではっきりしたが、カリ・ユガシリーズはようするに「トレンディドラマに対する塗糞」なわけですね。

トレンディドラマ的な美男美女ではなく、『101回目のプロポーズ』的な醜男と美女でもなく、醜男と醜女しかいなくなるというオチはある意味公平である。

 

  • 【カリ・ユガ 第4話 楽園の扉】

一家全員馬鹿だが、どこか牧歌的でほっとする話でもある。

娘がねこぢるTシャツを着ていることから、作風がポップになってるのが窺える。

 

  • 【カリ・ユガ 第5話 希望】

山野作品に通底する「家族への嫌悪(とりわけ子供に対する)」が端的に表れている作品。

とはいえ絵も作風もどんどん「禍々しさ」が抜けてきている。

90年代だし、まあ仕方ないか。

 

  • 【カリ・ユガ 第6話 覚醒】

90年代的カルト宗教と諸星大二郎作『子供の王国』の融合といったところか。

オチは『愛のむきだし』のようである。

「生き神様」のインパクトは絶大。

 

  • 【カリ・ユガ 最終話 爽やかな夜明け】

不法投棄、拳銃、お薬、環境団体などのタブーが並列に語られ、すべて小便でかき消して(人命共々)終わり。

打ち切り作だけあって絶妙なテキトー感が漂う。

 

  • 【脳梅三代】

母娘の呆けっぷりはなかなかのものだが、他に見所はないかなぁ。

なんとなくにったじゅんが描きそうな話ではある。

 

  • 【むしゃむしゃむソーセージ】

当時の女性漫画家が描きそうなポップさと、山野のエログロ悪趣味を配合した感じ。

両親が覗き見ている辺り、みこすり半劇場的ギャグ漫画として処理されているのだが、無論笑う気にはなれない。

読んでて一番キツかった話。

この頃の山野さんは、自分が後に双生児を授かるとは思ってもみなかったろうなあ。

 

  • 【工員】

日テレの24時間テレビなどではプロテクトされている障〇者が惨い目にあう話。

聾啞者に読唇術や筆談でレ〇プ宣言を伝えるのがエグイ。

 

  • 【さるのあな】

おかっぱのいじめっ娘、使用人の冷遇、障〇者いじめなど、ネタの使い回しが目立つ。

この時期の山野さんはねこぢるのサポートがメインで、あまり自分の漫画に集中できていなかったのかな。

 

  • 【走れタキシェ】

主人公は今で言う「真面目系クズ」そのもの。

「農芸系の学校は工業高校よりも圧倒的馬鹿が集う」という説を聞いた事がある。

銀の匙』のような小綺麗な世界ではない。

 

  • 【花嫁の花園】

かるま龍狼が描きそうな不思議系エロ漫画。

「結婚相談所」というのは当時のコントや映画にもよく使われていたシチュエーションであり、出会い系が発達した今ではあまりリアリティはないかもしれない。

 

  • 【壁】

「他者の意識をジャックして暴れまわる」というわりと古典的な作品。

この作品も完成度が高いとは思えない。

 

  • 【Closed Magic Circle】

筒井康隆諸星大二郎がネタにしていたように、一時期ニューギニアホットスポットであった。

たぶん我々が想定する未開人として投影しやすかったからだろうな。

今作はあまり出来がいいとも思えないので、未開人ものを鑑賞したい方は『マッドメン』を読んだり、映画『グリーンインフェルノ』を見た方がいい。

 

「壁」の続編的作品。

精神分裂症を描いているのだが、この手の作品は結局のところ『ドグラ・マグラ』の亜流に見えてしまうのが難。

 

  • 【水産】

うーん、不調が続いている。

絵も話もテキトーすぎて、『ねじ式』の亜流の亜流といった感じ。

フィヨルド定食」というフレーズもいまいちパワー不足である。

 

  • 【火星法経会】

もはややる気のなさしか伝わってこない。

ここまで荒唐無稽にしてしまうと何も面白くないです。

「テキトーに描いて、それが雑誌に掲載されているのがなんとなく楽しい」というようなナチュラルハイ状態だったのではなかろうか。

 

  • 【ラヤニール】

「肉体と精神がくっついたり分裂したり」というネタの使い回しが目立つ。

金と性と排泄を同時に表現したオチは、「人間の欲求なんてこんなもん」というやぶれかぶれ感が出ていて悪くないかも。

 

口と肛門の位置が逆についているニコちゃん大王的な美女が登場。

オチの一コマはファーサイドの『ビザールライド2』みたいだ。

ビザールライドは『Oh Shit』と『Soul Flower』が収録された名盤だから絶対に聴くように!

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  • 【ムルガン】

うーん、なんだか宗教本の挿絵を並べたような話であっけなく終わった。

 

  • 【総評】

山野一の資質はパロディにあるため、ホームドラマを反転させたような前半にはまだ見所があったのだが、後半は他人の夢日記を覗いている感じで面白くなかった。

絵もつるっとしているから、独特の禍々しさが減じている。

はっきり言ってネタ切れ。

全盛期を過ぎているのは間違いないだろう。

私に宗教の素養が備わっていたら、もっと楽しめたのかもしれないが。

 

【評価】45点

【作者】山野一